モラル信任効果

モラル信任効果(Moral Licensing Effect)とは、過去の善行やモラルな行動によって、自分自身に対する許可や証明を与えられるという心理現象です。モラル信任効果によれば、人々は一度善行を行った後は、その後の行動や判断において、より自己中心的で非道徳的な行動を取る傾向があるとされています。

この効果は、人々が過去の善行によって自分自身を「モラル的な人間」と認識し、そのために自己の行動についての規制や制約を緩める傾向があることを示唆しています。例えば、ある人が環境に配慮した行動をした後は、その後の行動において環境に対する無関心な態度をとることがあります。同様に、一度慈善活動に参加した人がその後は節約や寄付を控えることも見られます。

この現象は、人々の行動の一貫性や自己イメージの維持に関連しています。過去の善行によって自己を「モラル的な人間」と位置付けることで、自己のモラル的価値や正当性を証明しようとする傾向があるのです。しかし、この効果は一貫して現れるわけではなく、状況や個人の特性によって影響を受けることもあります。

モラル信任効果の理解は、個人の行動や判断における一貫性やモラルの重要性について考える上で重要です。人々は自己の行動においてモラル的な規範を守り続けることが求められますが、モラル信任効果が働くことで、一度の善行だけで自己を許容し、その後の行動においては自己規制を緩める可能性があることにも注意が必要です。